京味物語

 図書館で借りて読了。しばらく前に亡くなってしまい、ついに行くことができなかった京味と西健一郎さんの一代記。修業時代のまあなんとも陰湿で前時代的な酷い業界事情がウンザリだが、さすがに現代ではマシになっているのだろうか(有名料理人が傷害事件で警察沙汰なんてのもつい数年前にあったっけ……)。
 もちろん美味しそうな料理の紹介やイイ話も沢山あって、ちゃんとバランスはとれています。
 それはともかく、父親が名人級の料理人で、京都の丹波で貧しい時代でも品質的に良い野菜などを子供のころから食べていたとくれば、料理人になるべくしてなったんでしょうねぇ。
 単なる料理の技量だけでなく、常連用の提灯やカウンターでの客あしらい、異常に丁寧な退店時のお見送りなどを読む限り、こりゃ人気でるよなと誰もが納得するのでは。
 行きつけの割烹主人は京味に批判的なんだけど、料理の味もさることながら(レシピの本でも感じたが、この手の店にしては結構砂糖を多く使う)、こういうサービス面での人たらしぶりにある種のあざとさを感じたからなんだろう。
 とは言え、一度は食べてみないとそういうことも判断できないわけで、現代和食の一大勢力たる京味の弟子筋のお店はどこも高級でなかなか敷居が高いが、いつかは行ってみないといけないな。1人でも大丈夫な店あるだろうか……。