しばらく前にキンドルでまとめ買いかつ一気読み。5巻くらいまでブックオフで集めてそれきりになっていたのを『東京ヒゴロ』に圧倒された勢いで。
 いや素晴らしい。かなり崩れてディフォルメされた絵がため息が出るような美しさ。白黒のコントラストや黒の迫力はマンガ界随一の上手さでは。
 魔に憑りつかれた天才が己の存在意義の中核(右腕。すずさんと同じ!!)を失い、世俗へ帰還してハッピーエンドという構成は、この後の『Sunny』『東京ヒゴロ』という後期(?)松本大洋作品への転換点として象徴的な意味を持つと、後世の研究者にみなされるような気がする。
 ややマンネリ気味だったところからこの作品で再度復調、そしてまた新たな作風へと展開という流れにおいてもそうだろう。「右腕の喪失」はそういう観点からも非常に象徴的と言ったらうがちすぎか。
 そんな御託を書くのも楽しいけれど、こまけぇことはどうでもよくてとにかく傑作なんで読みましょう。