少年リンチ殺人―ムカついたから、やっただけ―《増補改訂版》 (新潮文庫)

少年リンチ殺人―ムカついたから、やっただけ―《増補改訂版》 (新潮文庫)

 図書館で借りて読了。あまりに凄絶で驚嘆すべき内容のため、途中何度か読み通すのがつらくなってしまった。
 リンチ殺人を犯した少年達だけでなく、その親・弁護士・裁判所・警察・マスコミなど、大半の被害者以外の登場人物が吐き気をもよおすほどおぞましい(単純な悪人たちだけでなく、「善人」の恐ろしさも含めて)。
 こういった現実を見せつけられると、「こんな外道どもは皆殺しにしてしまえ!!!」と考えないほうがどうかしている。こういったオウムのポアの教説的思想に説得力を全く感じない人間は、世間人としてはまっとうなのかもしれないが、私はそんな人間は信用できない。
 ジャーナリズムのお手本のような多角的かつ緻密な取材も素晴らしいが、本書をさらに価値あるものしているのは、どうしても出てしまう書き手の実存のようなものが強く感じられることだと思う。
 非常に多作な著者の代表作と言っていいだろう。読むべし。