図書館で借りて読了。記述は私が期待するような「面白さ」や生臭い話の裏側暴露は残念ながらないが、WHOでのポリト、SARSや鳥インフルエンザ対策は、当事者ならではの迫真性があって興味深かった。
当時から各国の大臣や首相クラスとやり取りして、時には厳しい要求をしたりと経験を積んできたことからすると、新型コロナ対策の中心人物としてこれ以上の適任はいないという経歴なのも大いに納得。
医療寄りの話は専門家だけあって大いに説得力あり、ある意味新型コロナを予見したような提言も今でも熟読玩味する価値があると思う。ただ、その尾身さんにして、「今の日本は関係性のが問題」的なある意味での日本社会批判は単なる知的な人の嘆き以上の中身はなし。どんな優れた専門家も神様ではないってことやね。
大体10年前に出た本だけど、今のコロナ禍でこそ読んで現状の日本の医療保険福祉システム全体の診断と改善に役立てることができるのでは。このコロナ禍が落ち着いたら、是非ともそれに対しても証言を残してほしいものだ。
それにしても、尾身さんレベルの人材がこれからの日本社会から出てくることがあるのだろうか。国力低下で専門教育レベルの低下、WHOなど国際機関での存在感希薄化で、せっかく志と能力がある人材がいても、実地での経験をさせてあげることが難しくなってしまうんじゃないかな。