図書館で借りて読了。多少気取った文体が鼻につくが、すこぶる面白いスポーツドキュメント。一気に読んだ。
 落合という選手としても歴代最強ランクの人物が、監督としても非常に有能で相当な実績を残したわけが本書を読むと良く分かる。立浪や井端・荒木の衰えへの指摘はさすがと言うほかない。
 その有能さが、日本社会では珍しい情実を徹底的に排除した「合理性」の貫徹で達成できたというのも示唆に富む。
 そして最後、これだけの実績を残しながら恐らくは経営的理由で契約終了となってからの井端のヘッドスライディングから始まる優勝への快進撃が、今まで徹底して排除してきたある種の根性というか男気というか、そういう心意気が爆発して発生するのが何とも劇的だ。
 日本シリーズでの完全試合目前でのピッチャー交代や、井端と荒木のポジションチェンジの理由の真相など、当時ろくな説明がなかったことの真相も書いてある。もともとの悪役キャラで当時は大分非難されていた気がするけど、正当な理由があったんですな。
 最近は表舞台で見かけないけど、これだけ傑出した技術論や戦術論を持っているんだから、それを何らかの形でまとめて残したほうが良いんじゃないだろうか。
 それと、立浪の衰えや井端・荒木ポジションチェンジの根拠となった落合分析は、現代の統計分析で裏付け取れるような気がする。どこかの野球オタクが是非実行して欲しい。