天才 勝新太郎 (文春新書)

天才 勝新太郎 (文春新書)

 図書館で借りて読了。水道橋博士激賞ということで読んでみたが、確かに滅法面白い。私は勝新太郎については、根本敬が書いているものからの情報以外詳しい話はほとんど知らなかったのだが、この本で、根本さんが紹介している奇人的側面以外の表現者的側面を初めて垣間見た。
 常軌を逸した完全主義と役への没入振りが、採算を度外視した製作体制を招き、結局経済的に行き詰ってしまうのだが、そんなことはどうでもいいのではないかというぐらい、ここで書かれている勝の芸術家としての姿はそれ自身非常に面白い作品となっている。それを示すエピソードを一つ。 

「おい!座頭市はどこだ!座頭市がいないぞ!」
勝の言葉に一同唖然とする。その様子に、勝は思わずガラスに映った自分を見て、初めて我に返る。
「あ……座頭市はオレか」(p.183)

 本書を読んで、テレビ版座頭市が見てみたくなった。
 以下余談。さらっと触れるだけだが、p.195には芸能界とヤクザってやっぱり縁が深いことをにおわせることが書いてある。世間に流通しているステレオタイプなイメージ通り、今もそうなのだろうか。多分そうなんだろうな。