正義の哲学 (道徳の系譜)

正義の哲学 (道徳の系譜)

 新刊で購入。語りおろしということで、かなり文体は読みやすいが、内容はヘビー。前半はギリシア、後半はキリスト教を扱っている中で、『「問題」と「自由」』の節など、狭い倫理学の範囲に収まらないある程度独立して読める哲学的議論も結構ある。
 個人的に、規則のパラドクスへの解決として(ある意味での)根源的規約主義が正しいと確信しているので、それとアナロジカル考えることが出来る革命的法創造というテーゼはしっくりきた。
 何度か言及されているし、最後もそれでしめられているけれども、この本の裏(というほど隠れてないけど)テーマはニーチェでしょうな。
 単に興味深い哲学の議論があるだけでなく、縦横無尽に古典的なテクストから現代の映画まで教養の深さも見せ付けてくれて、色んな知識の勉強にもなってしまって一石二鳥の優れた哲学書だ。大いにおすすめできるし、私もじっくりもう一度読み返してみたい。その価値は十分ある。