師弟のまじわり

師弟のまじわり

 図書館で借りて読了。師と弟子の関係を、持ち前の博識を駆使して、ソクラテスプラトンといった古代の聖賢からウィトゲンシュタインまで登場させて論じている。いや、それどころか、孔子顔回といった東洋の例どころか、アメフトのコーチまで登場(p.200)するんだから凄い。
 まあはっきりとした明確な論証や結論めいたものがあるわけじゃないけど、ハイデガー風に、現代の(主にアカデミックな場での)師弟関係について、ある種近代批判というか、人格的交流の欠如を嘆いてはいる(「結語」参照)。
 今や絶滅寸前であろう教養人の、現代文明へ懐疑としてももちろん読めるが、著者の博覧強記と、偉人達のエピソードを楽しむという読み方でもいいのでは(というか、私はそうした)。
 ちょっと面白い引用を。

 人類の可能性を開くという観点に立つとき、バッハとベートーヴェンは、ラップやヘヴィメタの比ではない。あるいはキーツが開拓した誌的洞察は、ボブ・ディランの及ぶところではない。この真実は自明であり、自明でなければならない(p.208)。

 ここまではっきり言い切ると気持ちいいな。