■

大森荘蔵セレクション (平凡社ライブラリー)

　新刊で購入。収録されているものはほとんど一度目を通したものばかりだが、改めて読み直してみて、その面白さを再確認できた。なおかつ文章も端正で上手い。いい哲学者は文章も上手いという私の仮説の最良の見本です。
　言ってることは結論だけ見ると、滅茶苦茶というか、「そんなバカなことあるか」とつい言いたくなってしまうような中身だったりするものも多いが、優れた哲学者の例に漏れず、その論証の穴を見つけるのは大変（例えば、過去は製作されたものだなんて言われて、どれだけの人が納得できるだろうか）。
　私が一番好きで、なおかつ影響を受けたのは「虚想の公認をもとめて」。これはかなり腑に落ちる中身で、今でもその大部分に賛成できる。
　解説座談会も、大森さんの本にふさわしい中身。話してるうちに哲学の議論になってしまうのが、何とも大森さんの弟子達らしい感じがして楽しい。
　何か一冊哲学の本を読んでみたいならば、本書ほどふさわしいものはないんじゃなかろうか。ナマの哲学そのものがそこにはあります。
　著作集も文庫になんねーかなー。高くて買えないよ・・・。