町山智浩斎藤環宮本大人といった人々が大激賞していたし、原作も好きだったので『この世界の片隅に』観に行ってきた。
 大傑作。正直のんこと能年玲奈の声はちょっと合うかどうか疑っていたのだが、目玉のおやじやルパン三世なみにドハマリしていて、これ以上の適役はないくらいピッタリ。
 次に絵。景色・風景の何と美しいことか。相当気合入ってますね。空襲シーンや兵器の音の迫力も凄い。特に私は最初の空襲で爆弾の破片の飛んでくるところが感心した。
 中盤から後半にかけて姪っ子と右腕を失うところから先は、『自虐の詩』の後半の盛り上がりを思わせるような怒涛の展開(前半と後半の落差も似てるかもしれない)。
 そして最後のエンドロール(+クラウドファンディング紹介)の何と凄まじく感動的なことか。満員の観客あちこちから涙を流して鼻をすする音が聞こえる中、私も当然号泣しながら、何とか(涙は止まらないものの)嗚咽だけはこらえましたよ。また最後に流れる曲がこれまた異常にマッチしているんだなぁ。普段はこういうちょっと軟弱っぽい曲は好きじゃないんだけど、さらに感動を倍加してくれるような効果があってヤバかったっす(今思い出しても涙出てきそう)。
 ここまでのカタルシスを与えてくれた作品は、私の乏しい映画経験の中でもそうはなかったかも。
 作品外の要素としても、ヤクザ・土人が支配する芸能界の理不尽な慣習で迫害を受けているカリスマ性のある女優が主演、これだけで義に乾いた人ならさらに肩入れしたくなるってもんです。この映画をヒットさせることで、そういう連中やそいつらの圧力に屈している腰抜けどもに一泡吹かせられるなら、こりゃあ金払って行かざるをえないですよ。
 映画鑑賞の醍醐味を存分に堪能しました。特に空襲シーンやラストシーンは映画館で見た方が絶対により味わい深いので、是非是非劇場で鑑賞しましょう。私ももう一度観に行きたい。

 そして、原作は持っているはずだけど奥にしまい込んで発掘不可能だったので、ダブリ覚悟で再度購入。帰宅して再読したところ、色々映画で意味が分からなかったことが確認できました。さらに、この映画化がほとんど完璧と言っていいくらいの理想的なマンガのアニメ化なのを深く確信。
 原作を尊重してできる限り忠実に再現しながら、時間的制約の中に見事に圧縮してテンポ良くまとめ、多少アレンジしていても(どこをどうアレンジしたか再見して確かめないと断言はできないが)作品の本質を損なっていない。そういう意味では、今後のマンガ原作映像化作品は、全てこの作品が里程標になるのは間違いないのでは。原作を読んだ後は漫棚通信さんの解説も必読ですね。
 
 

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)