工学部ヒラノ教授

工学部ヒラノ教授

 大学内幕もの。話としては古くなってしまったものもあるが、筑波大の黎明期の環境、東工大の学長選挙や、大学の組織改変に伴うポストをめぐる駆け引きの内幕等々は、ルポとしてそれなりに価値があろう。江藤淳の俗物性を示す話も少しだけ出てくる。
 また、大学は会議が多いと聞いていたが、これほど多いとは知らんかった。会議が半分大学教授の仕事じゃん、これじゃ。
 理系の中でも数学科と工学科では全然カルチャーが違うということも初耳。普段は、理系と文系という大雑把なくくりしか意識しないが、こんなに体質が違うのは知らなかった。数学者の原理原則へのこだわりや、時間への無頓着と、工学者の「エンジニアは時間に遅れないこと」と仲間の他の見事は断らないという姿勢は、相当距離がある。
 芸は感じないが、ストレートで読みやすい文章だし、エピソードも豊富で楽しく読めた。