一科学史家の自伝

一科学史家の自伝

 図書館で借りて読了。と言ってもぶ厚すぎるので流し読み。さすがにこれだけ細かい中身を全部記憶で書いているということはないだろうから、日記みたいなものをこまめにつけていたのかね。
 一番私が読みたかった、東大での人事のいざこざについて(pp.195-210)。大森荘蔵の(主に門下生の人々が書いた文章から得た)私の印象は、世俗のことにあまりとらわれず、大らかで卑劣なことはしないと勝手に思い込んでいたが、ここで紹介されているエピソードが本当なら、ちょっとイメージダウン。この本の感じだと、中山さんがトボけているとも思えないけど、真相はどうなんですかね。
 あと、『科学革命の構造』の翻訳の質は厳しい批判が多いが、それに対して反論している(pp.278-280)。うーん、ただネット上で翻訳並べて検討しているサイトなんか見ると、やや批判者側に分があるような・・・。
 その他の本全体は、時々有名人(ライシャワーだとかクーンだとか手塚治虫)が出てきたり、一昔前のジャーナリスティックな界隈の人々の交わりだったりは多少受需要がありそうだけど、他は本当に極々普通の学者の自伝。あちこち外国にたくさん行って元気だな〜くらいの感想。
 あとは、年取ってからの元気が凄いね。あちこち出かけていって講演したり、この本だって80歳超えてまとめてんだからたいしたもんですな。
 ということで、ボリュームや値段や面白さを考えると、図書館で借りてざっと読むのが一番良さそうです。