哲学者にならない方法

哲学者にならない方法

 図書館で借りて読了。いつものユーモアは少し抑え気味。前半も面白いけど、読みどころは4〜6章でしょう。音楽によって至上の喜びがもたらされたこと(pp.146-147)や、あまりに哲学の問題にのめりこみすぎておかしくなりそうになったこと(pp.153-154)はなどは、とりわけ印象深い。
 哲学が好きなひとなら、世俗の出来事に価値をみいだせないことや、10年間考え続けてきたことが全くもって見当違いだったと気付くなど、アマチュアといえどもかなりの程度共感できるじゃないだろうか。
 体系的な哲学教育がないことのデメリットは、(少なくとも私が多少は目を通している分析哲学系に限って言えば)日本語の良い入門書が増えてきて幾分事情は改善されている気がするけど、まだまだ足りない(特に大学のカリキュラム)んでしょう。
 幼年時代と青春の回想記としてもいいけど、哲学者の自伝として面白く読めます。
 あと、名作映画が理解できない(p.101)とハッキリ言い切ってくれるインテリがいるのは心強い。ある芸術ジャンルには強い感受性を持っていても、他の芸術ジャンルはからきしダメというのは結構あるんじゃないでしょうか。なかなか全部こなしますというのは難しいよ・・・。