- 作者: 天野貴元
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2014/03/12
- メディア: 単行本
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若くして舌癌にかかってしまった患者としての心境などは、失礼ながらそれほど新鮮味はない。本書の面白い部分はやはり将棋に関する部分だろう。A級に上がるような棋士は、奨励会時代からその才能を発揮して目立つ存在であるらしい(広瀬さんや阿久津さんが本書での実例)。
羽生さんの強さをメンタル的なタフさにあると分析しているけど、2つか3つの対極の内1つでも勝てばプロという状況で、結構な割合で連敗してプロ入りを逃す実例が紹介されているが、人生を左右する重要な勝負でいかに普段通りの実力を発揮するのが難しいかをそれは示しているわけで、そう考えるとかなり説得力ある気がする。
元奨の証言は表に出にくいらしいということなので、そういう意味も本書はそれなりにある程度価値がある。
人間の好奇心は、成功者とともに敗残者へも同様に向かうと思うんですよ。たとえそれが下種なゴシップ趣味だとしても、何ほどかは人間の真実を炙り出すのに貢献することも一面の真実なわけで。挫折してすぐは難しいかもしれないけど、他にも元奨の人々の証言を何らかの形で集められれば面白いと思うんだけど、誰かやってくれませんかね。