Seeing Things as They Are: A Theory of Perception (English Edition)

Seeing Things as They Are: A Theory of Perception (English Edition)

 キンドルで購入。いつも通り英語は最高に読みやすい。中身も快刀乱麻の明晰さで、知覚に関する多くの議論に共通するものを「Bad argument」と切り捨てているのは、ある意味とても気持ちが良い。
 しかし、サールの話に結構な説得力を感じることは感じるが、そこにある何とも言えない問題を捉えきれていないというか、大事なことを無視して得られたシンプルネスだという疑問もある。
 端的に実在論をもう前提してしまって、例えば個別の知覚を認識論的には主観的でも存在論的には客観的と整理するのはとてもきれいな図式ではあるけれども、「でも、そのような図式を考えているまさに今現に私に現れている世界(その図式がまさに現実化している私の世界)は、ひょっとしたら幻なんじゃ……」というBad argumentの第一歩にである直観のもっともらしい部分を消してしまっては、大げさに言えば哲学の非常に中心的な部分の意味がなくなってしまうのでは。独我論を議論抜きに間違っていると(ある意味では全く正しい)言い切ってしまったりすることにもその姿勢は示されている気がする。
 そういう「疼き」こそ何かが潜んでいるんだろうし、錯覚かもしれないけれど、だとしたらどのような錯覚なのか解明する必要があるんじゃないかなと思うわけです。
 他には、disjunctivismってあんまりはっきりしたイメージがなかったんだけど、(正しいのかどうかはともかく)かなりスッキリした説明と批判があるのも嬉しい。
 ボリューム的にも適度だし、哲学好きならそんなに気負わなくても楽しく読めるでしょう。
 余談。最近またサールの他の本の翻訳出たみたいだけど、それ自体は喜ぶべきではあるが、どうせ翻訳出すなら、英語が難しくて読むのがしんどい人の本を出してほしいなぁ。