図書館で借りて、流し読み気味に読了。「冤罪」を巡る人間ドラマや「拷問王」というイカす刑事のノンフィクションドラマだけでも十分面白いのに、そこから話が広がって当時の政治状況や司法制度・官僚制度などなどこれでもかと話が広がって、そのどれもが興味深いのだから凄い。最後は冤罪を生み出すメカニズムそのものをアダムスミス・進化生物学から説明するまでやってのけるんだから、ものすごい腕力に驚嘆しかない。もちろんその面白さは、徹底的な文献探索と取材に裏付けられていることが、当たり前だけれど大事なところ。
 裁判官やら検事やらにも、無実でも自白してしまう冤罪シミュレーション体験させろというのは大賛成。エリートどもには警察のデタラメさを身をもって分からせないと冤罪なんか減らないよ。
 単なる現代の調査オタクが調べましたというレベルを遥かに超える大作。著者は現代の在野の知識人の見本かもしれない。読むべし。