図書館で借りて読了。

 旧ツイッター鈴木智彦さんが勧めているのを目にして読んでみた。

 素晴らしい。

 控えめながら諦念というほど冷めてもいない落ち着いた文体、その文体であるがゆえに、重い話しもただただ陰鬱なだけでもなく糾弾でもない、かといって細部への気配りや繊細さといった方向行って感情に過度に耽溺するでもない、ある意味理想的なバランスが達成されたのでは。

 著者自身のなかなかに過酷な身辺事情がそれを生み出した部分は確かにあるのだろう。そしてそれが自身の避けられない運命に向けられたときにどう発揮されるのかは、是非ともあとがきを読んで確かめてほしい。

 真に「味わい深い」本、「胸を打つ」本というのはなかなか出合えるものではないが、本書はそう呼ぶにふさわしいと思う。