私小説のすすめ (平凡社新書)

私小説のすすめ (平凡社新書)

 「私小説は外国にない」というのがかなり怪しいことなど、文学に関する知識がない私のような人間には、「なるほどそうなのか」と勉強になった。
 この本で批判されてる大塚英志に典型的な、根拠を提示しないままのもっともらしい文芸評論家的文章に対して、年を取ったせいもあるが、段々受け付けなくなった。
 「近代は〜社会だから・・・」とか、「日本のゼロ年代サブカルチャーは〜的で・・・」のような物言いは、さっと聞くと(読むと)納得してしまうが、一歩立ち止まって根拠を探してみると、実は何もないなんてことは少なくない。この種の「思想」や「評論」に全く意義がないとは言わないけれど、学問的なものよりは、むしろ直感に基づいた芸術的な営みとして評価するほうがいいのではないかと、最近は考えている。