NHKブックス別巻 思想地図 vol.5 特集・社会の批評

NHKブックス別巻 思想地図 vol.5 特集・社会の批評

 立ち読み、しかも一部分だけ。お目当ては永井均。近年いくつかの場所で発表した、道徳をめぐる考察のまとめ的なもので、かなり難しい。が、期待に違わず素晴らしい。
 最近何となく、経験科学寄りの進化倫理学ゲーム理論といったアプローチが倫理学では(少なくとも私のような一素人には)多くなっている気がする(出版傾向から判断して)。ひょっとすると今後、倫理学も自然科学に段々と吸収されていくのかもしれない。
 しかし、そういった科学的アプローチでは解決できないような問題が確かにあると私は思うし、その有力な証拠が、ここで永井さんが論じている問題なのではないか。
 もう大分昔になってしまったが、学生時代永井さんの授業を受けたことがある。その時に永井さんは「私は倫理学存在論的に考えている」といったようなことを言っていた(と思う)。その発言の見事な実例がこの文章にあわられている。
 哲学・倫理学に興味がある人間は、すべからく読むべし。