Making the Social World: The Structure of Human Civilization

Making the Social World: The Structure of Human Civilization

 のんびりと読了。ボリュームは手ごろだが、試みは大胆。基本的に、社会的な組織(町内会から国家まで)の基本的な構造を論じるというもの。ここで論じられているそういった社会組織が持つ、ある種の規範性(deontic power)は、約束が持つ規範性をモデルに考えている。しかし、哲学的にはその約束の規範性自体が一体何なのかというのが私自身分からないので、どうも「これでスッキリ!」という感じが全然しない(それは本書の目的ではないのだろうから、非難することでもないのだろうが)。
 その他には、サールの自由意志論やっぱりよく分からんとか、後半の人権と国家に関する主張は、前半に比べてさらに荒削りで隙が多いのではないかといった点が気になったところ。
 論述の明快さは相変わらず素晴らしい。さらに、主張の壮大さ身近さ、議論の荒さなどを考えると、色々この中身をもとに哲学好きだけでなく様々な人が議論できるのではないだろうか。そういった意味では、とてもいい本だと思う。