瞬間を生きる哲学 <今ここ>に佇む技法 (筑摩選書)

瞬間を生きる哲学 <今ここ>に佇む技法 (筑摩選書)

 新刊で購入。体言止めの多い、独特の渦をまくような文体はやや抑えられている印象だが、それでも流麗な文章は健在。
 これは、中ではあまり言及されないが(索引がないんで本当にそうか自信はない)、テーマはニーチェ(が言ってたこと)でしょう。主に「芸術」を通して、瞬間を肯定するってことを書いてるんだから。
 個性的なのは、どうすればいいか、具体的にいくつか「技法」といって紹介されていること。わけの分からないヨガやオカルト本ならともかく、哲学書でこんなこと書いてあるのは珍しい。試してみた人はいるのだろうか、気になる。
 基本的な方向は大いに頷けるものの、こういう発想に対していつも感じているのは、はたして瞬間を生きることは、原理的に意図をもって目指して出来ることなのかという疑問。何も考えないだとか、無垢なる赤子だとか、そういった境地って、目指してなることと根本的に矛盾するような気がする。私の感覚で言うと、「肯定する」というよりは、「もう既に肯定されている」と言ったほうがしっくり来る。永劫回帰もそのことを言おうとしたと個人的に確信している。
 あと無教養なんで知らなかったのだが、プルーストってどちらかというと知性的で「瞬間を生きる」というイメージはもってなかったのだが、そういう読み方ができるのかと初めて知った。
 全体的な評価としては、非常に個性的で面白い哲学書であることは間違いない。大いにおすすめしたい。