心理学で何がわかるか (ちくま新書)

心理学で何がわかるか (ちくま新書)

 図書館で借りて読了。面白い。世間で抱かれているイメージの心理学の中身と、サイエンスとしての心理学の違いを明快に説明してくれている。統計の言葉遣いに慣れていないと少し難しく感じるかもしれないが(私もその一人)、読めないほどではない。
 導入部から好奇心をそそる書き方をしていて、いきなり

  • 兄は兄らしい性格、妹は妹らしい性格になる。
  • 親の育児態度は性格や気質に永続的な影響を与える。
  • 乳幼児は他人の心を理解できない。
  • 自由意志は存在する。
  • 幽体離脱体験は本当だ。
  • 乳幼児は長期間、物事を記憶できない。
  • 記憶力は鍛えれば強くなる。
  • 女性の理想の相手は、自分をもっとも愛してくれる人である。
  • トラウマは抑圧される。
  • 暴力的映像は暴力を助長する。
  • うつ病の治療には薬物療法が効果的である。

 まさか、こんなことは信じてないでしょうね。(pp.7-8)

 と来るから、読んでみたくなるでしょ。
 また、日本の精神医学が欧米に比べて大分遅れていて、なおかつスクールカウンセラーだの臨床心理士だのはやっぱり怪しいだろうという普段から私が抱いていた疑いが、専門家からきちんとされているというのは心強い。
 本書を読んで再認識したのは、ある程度の知識を身につけようと思ったら、数学、というより統計の基礎は必須だということだ。中学生くらいのときは、私もアホだから「数学なんて勉強して何の役に立つのか」と思ったものだが、今は「ちゃんと勉強しておけばよかった」と激しく後悔している。若い人は、ぜひとも数学やっときましょう。法律や歴史といった文系学問と違って、理系の学問は独学も難しいからね。