「実在」の形而上学

「実在」の形而上学

 新刊で購入。難しい。カッコを多用した文章も、下手ではないけれども読みにくい。さらに、人によっては(特にレヴィナスの箇所)「こんなもん連想ゲームじゃねーか」と思うかもしれない。だが、そんなことは問題にならないほど濃い中身の哲学書
 最後の時間論は、入不二さんや永井均さんの議論と呼応したものになっているので、2人の読者なら読むべし。
 結局優れた哲学者が向かう問いは、『「コレ」は一体なんで存在するのか?』に尽きると言っていいだということが、本書を読めばよく分かると思う。そのために「現象」だとか〈私〉だとか「他なるもの」だとか、色々道具立てを持ち出しはするけど、向かう先の本丸は存在すること(現象すること)の不思議なわけですよ。哲学の色々な議論・テーマは、その不思議がほんの少しでも背景に感じられるかどうかで、随分深みが違ってきて、単なるパズルときと本物の哲学がその点で分けられると、素人ながらに思います。
 値段も中身の重量級の本ですが、哲学好きならば必読です。
 補足:この著者の他の著作を読むことで、デリダレヴィナスといったいわゆるフランス現代思想が、単なる知的遊戯とは言い切れないことを教わりました。特にレヴィナスについて書いた本は凄いと思いますので、そちらも是非(レヴィナス解説本と言っていいかどうかは難しいかもしれないが)。
レヴィナス 無起源からの思考 (講談社選書メチエ(333))

レヴィナス 無起源からの思考 (講談社選書メチエ(333))