「東洋」哲学の根本問題 あるいは井筒俊彦 (講談社選書メチエ)

「東洋」哲学の根本問題 あるいは井筒俊彦 (講談社選書メチエ)

 井筒俊彦に対する認識は、あとがきで触れられている著者の若い時の認識「外国語の達人で何だか偉い人」程度のものだったが、少なくとも本書から判断するに内容は相当哲学的なようだ。
 今ここに現に存在する、「〜である」として現れる「〜がある」、という哲学的問題のアルファでありオメガでもある存在の問いを井筒のテクスト解釈(それはイスラム哲学やデリダや仏教解釈にも間接的になる)を通じてしつこく描写している筆致は見事。世界を虚心坦懐に眺めてみれば、「創造不断」なあり方をしているというのは全くその通りだと思う。
 ただ、やっぱり存在の問いに直面した時の反応が、最終的にそれを「味わう・享受する」しかない(例えばp.236)というところまでは私も考え付くんだけど、そこで止まらざるを得ないのか、そこから先の話の展開のさせ方が何かあるんじゃないか、というのを著者のような優れた哲学者には期待したいわけで。著者はある意味、最後の最後分量的には数少ない予告編程度であっても答えてくれているんだけど、その中身がある意味全く予想外。「共同体」「政治」「自由」「平等」へ何で展開できるのか、まだ全く理解できていない。もう1冊近い内にそういうテーマで本出してくれるみたいだから、それ待ちかな。
 あ、ちなみに中身は、字面こそ漢語だらけでいかめしいが予備知識は全く必要なく、哲学愛好家なら問題なく読める。どころか、滅法面白いので是非読みましょう。