新刊で購入。大森さんの主著、なんだろうけど、中核的な鏡像論と過去透視・同時性の問題が難しくて読むのが大変。正直良く分かってない。立ち現れが取り上げられる頻度と比べると、そのとっつきずらさからあまり触れられないが、「同時」や「今」についても議論としてまだまだ啓発される点が多いと思うんだけどなぁ。
 「重ね描き」「立ち現れ」は明らかに異様なこと言ってるんだけど、どこがおかしいか正確に議論するのは大変だというのは、今回再読しても変わらない印象。
 大森さんが主敵とする素朴な「内と外」「心と外界」的な表象モデルがなぜこうも直観に訴えてくるかというのは、いくら知覚や思考を詳細に説明しても、「私」と〈私〉の距離が埋まらないことが大きな原因だと思うんだけど、どうでしょうか。
 まあまあそれはさておき、大森さんの本は日本人が書いた哲学書の中では最高ランクなのは間違いないわけで。文章も気取り過ぎず読みやすいながらさりとて崩れすぎず品があってとても良い。
 現代J哲学のゴッドファーザーたる大森さんの主著が今まで文庫になってなかったのが大問題過ぎる。今後全著作手に取りやすい形にしてほしい。
 現代思想で大森さん特集が近いうちに出るらしいので、それを楽しみに待ちたい。