The Meaning of Belief: Religion from an Atheist’s Point of View

The Meaning of Belief: Religion from an Atheist’s Point of View

 キンドルで購入。ドーキンス的な強い宗教批判への批判。同一化と超越を宗教の本質としてするアレコレの分析はいかにも哲学しゃっぽい手堅さで説得力はある。20世紀のナチやスターリンの悪行も宗教的な感じがするのはなぜかと言われれば、宗教の本質が強く働いているからってのはある意味クリアな診断ですな。
 ただ、内容もそうだし、「プラグマティックに批判でなく寛容を」ってのも、長い目で見ればドーキンス無神論に比べて功利的に劣るのではと個人的には思う。
 そりゃみんながみんな新無神論者みたいに頭が良くないし環境も恵まれてないってのは否定しがたい事実だけど、アメリカでの原理主義キリスト教イスラムの首肯しがたい部分の悪影響を考えれば、絶対啓蒙を前面に打ち出して戦った方が遠い未来の人類の幸福に資するでしょう。戦闘的な人が好きってのもあるけど、余裕ブッコいてるとバカが付け上がるというのは現代日本でも腐るほど溢れかえっているからね。ものわかりの良いインテリぶって寛容を説くような姿勢は、そういう連中に付け込まれちゃうというのもあるわけで。
 優れた知性(特に多少年取って最前線から退くかどうかって人が適任だと思う)には、多少の公共心・義侠心発揮して無知蒙昧と戦ってほしいんですよ。そういう意味で、ちょっとクレインのスタンスはどうかと。
 英語は非常に読みやすいし、ゴリゴリの哲学書ってわけでもないんで、高校生・大学生の英語勉強本としても良さげ。