出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記
 

  図書館で借りて読了。翻訳家という珍しい職業の実情・懐具合や、厳しい出版事業が良く分かる当事者からの証言という意味では面白かった。特に訳書がベストセラーになる下りと、そこからの急降下はなかなか読ませる。
 しかし、生々しい体験談を他人事としてニヤニヤしながら読めると思っていたら、登場人物がことごとぐゴミクズ外道で腹立たしくなり胸糞悪くなってしまい、読後感はモヤモヤ。著者からの証言だけで判断するなと言われるかもしれないが、時折耳にするこの手の話を考えると、大筋で正しいのだろう。
 発注者による下請けイジメに加え、出版業界という関わりたい人が多いけどかかわれるひとは少ない(しかも産業としてそこまで大きくない)という構造で「やりがい搾取」が多発しやすい土壌に加え、長引くデフレ不況でもう文筆や出版で飯食ってくのはひょっとしたらプロスポーツ選手並みに難しいんじゃなかろうか。
 しかも業界の中にいる連中が本書の登場人物のような破廉恥漢ばかりだとすると、もう一回滅びた方が良いんはないかとすら思う。ちゃんと契約書作るだとか、多少は改善されてんのかね?
 さらに、担当編集者が翻訳書を出すのに訳文のクオリティについて社交辞令程度に振れることすら少ないとは……。倫理観がないだけじゃなく知能や学力も低いのに、どうやって編集者になれたのか不思議だ。
 余談。巻末の宣伝からするに、この出版社は色んな職業の実録物を出してるみたいだ。気になるのでそっちも読んでみようかな。