キンドルで購入。

 『「社会正義」はいつも正しい』の著者と不満研究事件の当事者が書いた本ということで、はじめから色眼鏡をかけて警戒する人もいるかもしれない。

 本書はそういった党派性に足を引っ張られている人とも、完全に無視するのではなく何とか対話の糸口を探すためには非常に役立つ実践的なガイドブックになっている。初級から超上級まで、具体的な言い回しまで示しながら懇切丁寧に方法を説いてくれているのだから親切極まりない。

 そりゃ政治や宗教などで特定のイデオロギーに凝り固まった人と話すのはしんどいし、本書もそういう人たちを一気に説き伏せるスーパーテクニックなんて書いてないですよ。

 しかし「分断」がかなり現代社会の病理として取り上げられていることが多いことを考えても、本書は非常に貴重な導きの糸になってくれることは間違いないですよ。

 訳者解説も著者の思想傾向に対して疑問を呈しながらも、それをわきに置いて内容は良いと公平に書いてくれているのは知識人の矜持を感じさせて嬉しい。

 著者の1人は、刑務所で受刑者たちと実際対話して修行したという相当な実践も積んだうえでの中身だからね。重みがあります。

 「ノーディベート」なんて君子にあるまじき態度を取るような人々、そういった人々を見捨てるでもなく何とかマシな方向に少しでも向けたい、なんて人は必読かと。