The Mystery of Consciousness

The Mystery of Consciousness

 書評集なのだが、興味深いのはデネットとチャルマーズの応答部分だろう。
 まずデネット。「俺はそんなこと言ってない!!」とある意味しょうもない反論をすれば、サールも負けじと「いや、お前は確かにそういうことを言ってる!!」とやり返し、あまり生産的な議論にはなっていないのだが、一流の哲学者でもこういうことをしているというのは何となく微笑ましい気がする。ちなみに、本書がサールの本であることを差し引いても、この言い合いはサールに分があると思う。
 チャルマーズのほうは、一応中身についての議論にはなっている。なってはいるのだが、かみ合っている分けではない。ただ、このかみ合わなさの中に、意識についての哲学的問題が良く現れている。それが一体どういう問題なのかというのは、「〈私〉を論じるときには常に「私」を論じていることになってしまう」という問題なのだが、私のへっぽこな解説よりも永井均の以下にあげる本を読んでいただければ感じはつかめるだろう。
なぜ意識は実在しないのか (双書 哲学塾)

なぜ意識は実在しないのか (双書 哲学塾)

 しかしサールの英語は素晴らしく分かりやすい。私が読んだことがある哲学者の中では、日本人を含めても一番クリアな筆振りなんじゃないかな。これは素直に賞賛すべきことだと思う。みんなこれくらい読みやすい英語で書いてくれれば、もう少し私の読書ペースもアップするのだが・・・。