- 作者: 山田圭一
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2009/09/25
- メディア: 単行本
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ウィトゲンシュタインを懐疑論から見てという内容で、議論のまとめや紹介部分は良くまとまっていていると思う。しかし、懐疑論への(ある種の)回答やウィトゲンシュタイン解釈といった、オリジナリティが求められる部分は、いまいち迫力がない。
まあでも、筆者によっぽどの実力がない限り、哲学に限らず学術書はそうなってしまうのはしょうがないでしょう。
あとそういう感想を持ってしまうのは、哲学の懐疑論って提起するのは比較的簡単だが答えるのが絶望的に難しい(答えられない)というのも大きな要因だと思う。私みたいな素人の場合、懐疑論的疑問を提示するだけでついつい哲学した気になってしまいがちだ。そして、疑問への回答をしようとする議論に対し、問いの感じさせる魅力が大きすぎて、どうしても回答がそれなりに頑張ったものでも、満足できずに、その議論の評価を低く見積もってしまうということがあるような気がする。
というわけで、著者にはボンクラが偉そうに評論して申し訳ないが、上記のような事情もあるので勘弁してもらうとしよう。
個人的な疑問点。ムーア命題って、「神様がいる」とか「同性愛は悪いことだ」みたいなのは入らないんですかね。ある種の人にとっては、「地球は1万年前にも存在した」みたいな命題と同じくらい確実だと感じられるんだろうけど、私はムーア命題には入れたくない。どうやって決着つけるんでしょうか。多分「決着つけるという発想そのものがまずい」だとか答えるのかなぁ。何か釈然としない。