〈私〉の哲学を哲学する

〈私〉の哲学を哲学する

 新刊で購入。途方もなく素晴らしい。そして途方もなく難しい。この本でもさらなる新しい話題が出現。〈私〉問題をいろいろな角度から論じるごとに(=本が出るたびごとに)、展開・深化があるということが、ちょっと信じがたいくらいに凄い。
 本書で一番難しくまた一番読み応えがあるのが、討論が終わった後で書いた永井の「聖家族―ゾンビ一家の神学的構成」。一読したくらいでは全然分からんが、pp.262-272あたりは、従来にない展開(否定や身体がらみの話)で、また色々今後の発展が見込まれる議論だと思う。
 他の三人の話もそれぞれ興味深い点が満載で、読み応え十分。また、最初の永井自身による問題のまとめと提示も、さすがに本人がやってるだけあって、分かりやすくそれでいて問題のややこしさを感じさせるものとなっている。哲学好きなら必読でしょう。私も、もう一度分からなかったところを読んで、ゆっくり考えてみたい。
 あと、どうでもいいけど、短い語句解説(「内包」とか)がいくつかあるが、これが非常に分かりやすい。
 同時代に永井均という哲学者がいて、これだけのものを書いて読ませてくれると言うのは、本当に幸運なことだ。ウィトゲンシュタインデカルトの本をリアルタイムで読めるのと、ひょっとしたら同じくらいに。私のような熱烈なファンがいるのも当たり前だ。
 個人的に寂しいのは、社蓄の身分でこの本の中身について議論できる人間が回りに一人もいないこと。学生に戻りたいなぁ。