それをお金で買いますか――市場主義の限界

それをお金で買いますか――市場主義の限界

 図書館で借りて読了。本格的に突っ込んだ話というよりは、豊富な事例を提示して議論へと誘う知的読み物といったところか。
 「腐敗」や「公共善」という道徳的視点から市場万能主義を批判するというのは、それなりに有効だとは思うが、そういった道徳的要素すらパラメータの一部として扱うことで、市場によるファインチューニングを実現することができると反論したくならないだろうか。
 数学や(行動)経済学といった自然科学の道具立てという強力な武器を持つ相手に対しては、本書の中身ではまだ対抗するには弱い気がする。
 それにしても、出てくる例が皆興味深い。保育園のお迎え遅れたら罰金とることにしたらもっと後れる親が増えるという有名な話から、保険や広告、学校教育と話題は豊富。日本でも今後似たような話がたくさん出てくるだろうことが用意に予想できることを考えると、今のうちに読んでおいてそれに備えるのがいいかもしれない。
 それほど気張らずに読めます。おすすめ。