キンドルで購入。

 罰や責任を話題にするときは、ついつい死刑を中心とした近代制度を前提に論じてしまう傾向があるが、もっと広い視野でとらえられるという指摘は、あらゆる場合を考えようとするしそれが比較的得意な哲学者らしい内容だろう。

 応報の不可欠さの指摘も率直で良い。これもある意味「応報は良くない」的な活動家・実践家目線ではなく、哲学者目線を感じる。

 ストローソン的記述的な解決(?)は個人的にはモヤモヤする。責任や自由抜きに人間の営みは記述しえないし、ある意味行為遂行的矛盾に陥るといわれても、「そういったこと全てが実は単なるモノの作用にすぎず、自由や責任は幻」といったカウンターがまた来るのでは。

 それに対して「いやそういうこと自体自由を前提をしている」と再カウンターを繰り出すのだろうけど、この相克運動自体・正反合の弁証法の力・運動という、ある意味語り得ない・無限後退する示すことしかできないかもしれないことそのものが、中心にあると思うんだよなぁ。

 という意味で最後が少し嚙みつきが浅い印象。

 とはいえ、ブックガイドも充実してるし文章の上手さも相変わらずで、良い本であることには間違いない。

 この調子でバリバリ沢山本書いて下さい。