- 作者: 青山拓央
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2011/01/08
- メディア: 文庫
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改めて読み直してみて、もう脱帽するしかありませんというのが感想。旧版を読んだときは、アキレスと亀の話はそんなに印象に残らなかったが、いやいやどうして、これ凄い。他のパラドクス(飛ぶ矢のパラドクスなど)とアキレスと亀のパラドクスって、どこが違うのか今までピンと来なかったのだけれど、これを読んで、そこに固有の哲学的問題が多少なりとも理解できた気がする。少なくとも、アキレスと亀に関して書かれたものの中では、間違いなく最高レベルの素晴らしさだと思う。これを20代の学生が書いていたとは・・・。恐るべき才能と言うほかない。
その他の部分も、予備知識は一切前提としないが、水準は高い。今回増補として付いたものは、他の部分よりも学術論文っぽい感じで、中身も難しくて一読しただけでは十分理解できなかったが、色々論点が出ていて読み応え十分。
タイムトラベルについて書かれた本って、時間論の一部として登場することはあっても、メインで取り上げられたものとなると、実は哲学関係ではそんなに多くないんだと思う(英語のものも含めて。論文はたくさんあるけど)。そういう意味でも貴重な本でしょう。哲学ファンならもちろん読むべきだと思うけれど、SF好きもきっと読めば面白いのではないか。
これだけの能力の持ち主である。著者の今後の活躍にも大いに期待したい。