仏教論争 (ちくま新書)

仏教論争 (ちくま新書)

 キンドルで購入。内容的には普通の新書版レベルをはるかに超えた本格的な内容で、引用にページ数さえ入っていればほぼ学術書。歯ごたえあり過ぎで、さすがの明晰さな文体だが、それでも十分理解しきれない部分も。あとは、かなりゴリゴリした論争整理やテクスト解釈なので、ちょっと専門的過ぎて近づきにくいかもしれない。
 それでもポストモダン仏教、オウム真理教分析はあまり目にしたことがない非常に興味深い中身だし、2つの仏教論争にある実体化傾向・実在論傾向、さらにその先にある背景としての生命主義という指摘は思想史的指摘として感心しきり。
 さすが宮崎さん、並みの学者をはるかにしのぐ博覧強記と論理力でした。
 一つ疑問。言語を虚妄を生み出す中核と診断するのは分からなくもない。しかし、それを強調あまり、宮崎さん自身が批判しているポストモダン時代に流行ったある種の言語がなければ何もない的「言語決定論」を前提にしていないか。普通に考えれば、言語があろうがなかろうが、石は石だし星は星だし、我々の認識とは独立に(普通の意味での)モノがあるんじゃないの。それを否定するってかなり変だし、外界否定の懐疑論でもないようだし、そのへんが良くわからん。