図書館で借りて読了。一応誰でも読める教科書的体裁だが、要求水準はかなり高い。初学者ではなく、中級者以上向けな印象。
 文章は読みやすいし、明らかに著者は味に対して「分かっている」感がして、内容は極めて真っ当で示唆に富む。終わりの方の思想部分もバランス感覚があって、通人ぶった嫌味やフードディー的間抜けさもない。映画との類比で食材の組み合わせについて書いた部分(pp.220ー224)は、今まで私が全く思いつかなかった類比なので思わず膝をうった。
 さすがに研究者だけあって、文献の明記も完璧だしブックガイドも極めて有用。私も早速何冊か読みたい本リストに追加した。
 ただねぇ、著者は配慮してくれてのるのは分かるけど、貧乏でまともなコンロすらないような安アパートに住んでいる人にはやはり色んな意味で本書の内容は贅沢過ぎて手が届かないわけで、幾分「所詮大学教授で金と時間に恵まれたブルジョアだからこんなことできんだろ」というひがみはどうしても感じてしまうよなぁ。
 それはともかく、食に何らかの形で関心があるなら、読んで得るものが必ずあるだろうというくらい充実した内容なので、大いにオススメでございます。