哲学

ニーチェの道徳哲学と自然主義: 『道徳の系譜学』を読み解く 作者:ブライアン・ライター 春秋社 Amazon 新刊で購入。随分読むのに時間がかかってしまった。いやいや素晴らしい。分析哲学的スタイルで明晰判明を範とした記述・論証は、古くは実存哲学寄り、さ…

工場日記 (ちくま学芸文庫) 作者:シモーヌ ヴェイユ 筑摩書房 Amazon 図書館で借りて読了。単なる数字の記録と知性溢れる洞察、そして率直な手紙の文面とヴェイユの様々な側面がうかがえるが、やはり芯には苛烈とも言える率直さ・純粋さが感じられる。 俗人…

The End of Value-Free Economics (English Edition) Routledge Amazon キンドルで購入。経済学の知識とセンの著作について最低限の知識がないと辛い。というわけで特に後半は飛ばし読みになってしまったが、前半のアダム・スミスは実は道徳を軽視したわけじ…

独自成類的人間 作者:永井 ぷねうま舎 Amazon 新刊で購入。こちらは前著と違い、ある意味普通の話題が多くて中身も分かりやすい。論脈にひたりついて議論を解釈するって、哲学を多少かじった私も苦手だし、ついつい立場を既存の枠組みに分類して賛成したり反…

Drawing the Line: What to Do With the Work of Immoral Artists from Museums to the Movies 作者:Matthes, Erich Hatala Oxford Univ Pr Amazon キンドルで購入。論点を提示してある程度整理してはくれているけど、クリアでハッキリした議論の再構成と結…

ウィトゲンシュタイン 『哲学探究』という戦い 作者:野矢 茂樹 岩波書店 Amazon 新刊で購入。内容自体はよくよく考えれば難しいものばかりではあるものの、あまりにも筆ぶりが明快で分かりやすく、思わず笑ってしまうくらい。その点だけなら哲学探究の研究書…

Conversations about the Meaning of Life (Conversations about Philosophy) (English Edition) 作者:Benatar, David,Metz, Thaddeus,Werbeloff, Jason,Oppenheimer, Mark Obsidian Worlds Publishing Amazon キンドルで購入。短めの人生の意味の哲学入門編…

文学部という冒険 文脈の自由を求めて (人文知の復興) 作者:田島正樹 NTT出版 Amazon キンドルで購入。全体性の話や精神分析についての箇所は何度読んでもピンと来ないが、凄まじい教養で論じる批評論などはさすがの説得力。聖書からアニメまで縦横無尽に行…

Reality+: Virtual Worlds and the Problems of Philosophy (English Edition) 作者:Chalmers, David J. Penguin Amazon キンドルで購入。ヴァーチャルリアリティに関連する形而上学、認識論、倫理学と哲学全般を取り扱う包括的な内容。その分ひとつひとつの…

遺稿焼却問題 作者:永井均 ぷねうま舎 Amazon 新刊で購入。 最終章の中島義道botなど一番直接哲学的な話はまだついていけるが、基本ひどくムズイ。「センスがあれば理解できる」らしいけど、私はその点全くダメ。森田童子の話題など何がなんだかという感じで…

〈私〉をめぐる対決――独在性を哲学する (現代哲学ラボ・シリーズ) 作者:永井均,森岡正博 明石書店 Amazon 新刊で購入。最初の対談は和やかながら、続く論文は一転バチバチ。特に永井さんのものはフルボッコ。確かに森岡さんが参照するのは古い文献が多めで、…

Learning to Look: Dispatches from the Art World (English Edition) 作者:Noë, Alva Oxford University Press Amazon キンドルで購入。哲学者が書いた芸術に関する四方山エッセイ、取り上げられるのはわりと有名な芸術家・芸術作品が多く、普通の人でも知…

21世紀の道徳 作者:ベンジャミン・クリッツァー 晶文社 Amazon 図書館で借りて読了。以前紹介した綿野さんの本と方向性は同じ。骨格にシンガー的倫理学を据えながら、行動経済学や心理学の知見を背景に地に足の着いた論を展開している。 特に良かったのは仕…

Not for Profit: Why Democracy Needs the Humanities - Updated Edition (The Public Square Book 21) (English Edition) 作者:Nussbaum, Martha C. Princeton University Press Amazon キンドルで購入。人文系の学問の意義はそれなりに聞くべき意見だとは…

The Oxford Handbook of Philosophical Methodology (Oxford Handbooks) (English Edition) OUP Oxford Amazon キンドルで購入。分厚くて読むのに大分時間がかかって、前半の内容全然覚えとらん。 全体的には方法論の話もあるにはあるが、英語圏での現代哲学…

現代思想 2021年12月号 特集=大森荘蔵 ―生誕一〇〇年― 作者:森岡正博,山口尚,安藤礼二,飯田隆,丹治信春,永井均,中村桂子,野家啓一,野矢茂樹 青土社 Amazon 新刊で購入。哲学の議論をガッチリしているものもあれば、読み物風のものもあり、どれも力作ぞろいで…

新視覚新論 (講談社学術文庫) 作者:大森 荘蔵 講談社 Amazon 新刊で購入。大森さんの主著、なんだろうけど、中核的な鏡像論と過去透視・同時性の問題が難しくて読むのが大変。正直良く分かってない。立ち現れが取り上げられる頻度と比べると、そのとっつきず…

はじめての動物倫理学 (集英社新書) 作者:田上孝一 集英社 Amazon キンドルで購入。前半は簡潔にまとまった概説で良い。ただ、入門書にも関わらず義務論的アプローチの正しさを前提にして話を進めるのは、個人的には気になった。 4章以降後半は前半に比べる…

Philosophical Method: A Very Short Introduction (Very Short Introductions) (English Edition) 作者:Williamson, Timothy OUP Oxford Amazon キンドルで購入。広い意味での分析系の哲学はどんなものかというのが良くわかる本。それこそ古代ギリシアから…

Normativity and Naturalism in the Philosophy of the Social Sciences (Routledge Studies in Contemporary Philosophy) Routledge Amazon キンドルで購入。規範・合理性をテーマにしているというから読んでみたが、イマイチ。合理性が人の行動の説明にど…

日本哲学の最前線 (講談社現代新書) 作者:山口尚 講談社 Amazon キンドルで購入。まともに読んだことがあるのは青山さんだけ、他の人は名前すら知らん人もいた。 一人一人の紹介ボリュームはちょいと少な目だが、それは全然欠点じゃない。この本は著者のまと…

サボる哲学 労働の未来から逃散せよ (NHK出版新書) 作者:栗原 康 NHK出版 Amazon キンドルで購入。フラがあり独特のリズムとグルーヴで読むものを高揚させる文章ゲイは見事だ。段落ごとにいちいち決めが入るのもダサさを感じさせない。 中身もアナーキス…

Everyday Aesthetics 作者:Saito, Yuriko Oxford University Press, USA Amazon キンドルで購入。美や芸術を考えるときには、どうしてもファインアートをモデルに考えがちだが、日常的な対象や風景や環境全体の雰囲気などにある美もまた探求の対象になるとい…

Being Realistic About Reasons 作者:Scanlon, T. M. 発売日: 2014/03/15 メディア: ハードカバー キンドルで購入。久々に、いかにも分析哲学っていう感じの本。ただ、理性・理由の力というか、理性がどう行動の「もと」となるかというようなこの手の話は、…

Taste as Experience: The Philosophy and Aesthetics of Food (Arts and Traditions of the Table: Perspectives on Culinary History) (English Edition) 作者:Perullo, Nicola 発売日: 2016/04/05 メディア: Kindle版 キンドルで購入。「無関心」という項…

哲学トレーニングブック:考えることが自由に至るために 作者:山口 尚 発売日: 2020/10/24 メディア: 単行本(ソフトカバー) 新刊で購入。各章の分量からしてしょうがないが、議論としてもっと深く突っ込んで欲しいと思わなくもない。しかし内容はとても面白…

Reasons and Persons 作者:Parfit, Derek 発売日: 1986/02/20 メディア: ペーパーバック キンドルで購入。自己利益説吟味から始まり、人格の同一性、世代間倫理的な話など内容は豊富。永井均さんが確か『転校生とブラックジャッック』の中で、予備知識がなく…

晩年のカント (講談社現代新書) 作者:中島義道 発売日: 2021/01/20 メディア: Kindle版 キンドルで購入。晩年のカントの哲学と生涯を紹介と書くと無味乾燥だと思われるかもしれないが、フィヒテとの確執や政府との軋轢が起こったときにカントはどういう心持…

詩としての哲学 ニーチェ・ハイデッガー・ローティ (講談社選書メチエ) 作者:冨田恭彦 発売日: 2020/02/10 メディア: Kindle版 図書館で借りて読了。タイトルはポモっぽくてまたいつもの与太話かと思うかもしれないが、中身は普通の哲学史的なもので安心(と…

生まれてこないほうが良かったのか? ――生命の哲学へ! (筑摩選書) 作者:正博, 森岡 発売日: 2020/10/15 メディア: 単行本(ソフトカバー) 新刊で購入。反出生主義を歴史的に仏教、ショーペンハウアー、ニーチェから現代のベネターまで網羅しての概説は貴重。…